「組織を変えていこう」ということに向けて、メンバーの思考や行動の習性を変えるには、大きなエネルギーを要します。組織の変革と一言にいっても、リーダー達にとって最も難しいテーマです。
私は、色々な形で、数多くの企業の変革を支援してきて思う事、組織を変革するための最も効果的な方法は「リーダー自身の言動を変えること」だということです。
「リーダー自身の言動を変えること」が、なぜ組織の変革に大きな威力を発揮する要素となるのか。
それは、メンバーはリーダーの言動に影響を受け、リーダーが関心を示す事柄しか耳に入れようとしないからです。
例えば、メンバーがリーダーに「部下からこのような相談がありました」と報告しようとした時、リーダーが一瞬でも「聞きたくないな」「嫌だな」という表情をしたとします。するとメンバーは、その瞬間に「このリーダーには部下の相談事は言えないな」と悟ります。
そして、「また嫌な顔をされる」という気持ちが先行して、二度とマイナスの情報を上げてこなくなるのです。
その結果、「リーダーのご機嫌を取るために、野球の話題をしよう」「興味を持って聞いてくれるから、先日訪問した会社の話でもするか」という具合に、リーダーが興味を持って聞いてくれる話しかしてこなくなるという状況が生まれてしまいます。
「リーダーがどんなことに耳を傾けてくれて、どんなことには耳を貸さないのか」を、メンバーは想像以上に鋭く見抜きます。そして、リーダーがどの話題に耳を傾けるのかによって、メンバーは話題を選ぶのです。
良くも悪くも、リーダーはメンバーからよく見られているのです。
だから、リーダーは、自分の言動をコントロールする必要があると思うのです。
話題を選り好みするようなリーダーの態度は、メンバーの行動や思考にまで悪影響を与えます。
もし、職場に好ましくない風土が定着しているのであれば、それはリーダー自身の言動によってもたらされた「悪しき産物」だと考えるべきです。
すべての原因がリーダーにあるわけではありませんが、リーダーの言動が大きな要因の1つになっていることは確かです。
逆にいえば、リーダーが関心の範囲を広げ、情報発信の内容を変えたり、耳を傾けるテーマを変えたりすれば、メンバーの思考や行動に影響を及ぼして、組織を変える原動力となり得ます。つまり、リーダーが自分の言動を意識的に使うことです。
もし、新しいことにチャレンジしない安定志向がはびこっているのであれば、リーダー自身が新しい提案にあまり関心を示さなかったか、またはチャレンジを促進してこなかったことから生じた結果だと言えます。これからは、メンバーに常に新しいアイデアを求め、実際にいくつかの案を取り入れて、また「失敗を恐れなくてもよい」という指導をしていく必要があるわけです。
リーダー自身が、変革のきっかけを創り出す
リーダー自身が「何に関心を示し」「どんな話に耳を傾け」「どんな話にうなずくのか」、もっと言えば「何に時間を費やしているのか」
職場の風土は、リーダーの言動に強い影響を受けて出来あがっています。その風土を変えようと思うのならば、リーダー自身が言動を変える。それがきっかけとなり、組織は必ず変化します。そんな組織を沢山見てきました。時間は多少かかるかもしれませんが、小さな変化が次第に大きな潮流となって、組織の変革を後押しとなるはずです。